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EVM (Earned Value Management):プロジェクトでのコスト管理

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皆様、こんにちは!日本プロジェクトソリューションズ代表取締役の伊藤です。
このブログをコツコツ書き始めてからそんなに日が経っていませんが、定期的に皆様に閲覧いただいているようで感謝の気持ちで一杯です。とても書きがいがあります!

さて、今日はPMP®らしく、ちょっとだけ、レベルをあげてプロジェクト成功率をあげるための「プロジェクトでのコスト管理」のお話です。(PMP®受験をご検討されている方は、ココ必ず試験に出ると思います。)

1億円以上のプロジェクトが一つの目安。

本日記述するコスト管理は1億円以上使うプロジェクトで利用すると良いと思います。私の経験上ですが、1億円未満のプロジェクトですと、このコスト管理の作業がコスト内でできない可能性が高いです。つまり、コスト管理にもお金がかかるので(少なからず工数がかかる)、小さなプロジェクトの場合は今回ご紹介するEVM以外の手法でコスト管理されることをオススメします。

EVMってなに?

EVMを語りだすと、それだけで半日ぐらい語れる内容ですが、分かりやすシンプルに伝えるのがこのブログのモットーですので、話を単純化してご説明いたします!

EVMは Earned Value Managementの略で、イーヴイエムと多くの皆さんが言っています。日本語に直訳すると「出来高管理」といったところでしょうか。

これで何ができるの?というと、「スケジュールとコスト」を同時に管理でき、しかも視覚的に管理できる利点があります。

実はこの技術、1960年代に米国国防総省やNASAで使われはじめた歴史は浅い技術なんです。1960年代より前からスケジュール管理などの技術は発達していましたが、「コスト」に関する手法は後からできたんです。
プロジェクトの現場で一般的になり始めたのは1990年代と言われていますが、日本では、残念ながらその10年後、2000年代から利用し始め、なかなか現場では使われていない技術です(使っていらしゃる方は、すばらしい!)。

皆さんもこんな経験ありませんか?

PM:「山田さん、モジュールAの進捗大丈夫?」
山田さん:「ちょっと遅れ気味ですけど、挽回できます!」
PM:「そうか、モジュールAのコスト状況はどうなの?挽回するときにコストがかかるのでは?」
山田さん:「概ね予定どおりで何とかさせます。」

プロジェクトメンバーからの報告で「ちょっと」とか「概ね」という主観的な表現を聞いたことがありませんか?ありますよね?小さいプロジェクトなら良いのですが、億単位のプロジェクトでは、この主観的な報告が命取りになる場合があります。

これを客観的に可視化させ、近い未来にスケジュールやコストでどんなリスクが起こりえるかを示してくれるのがEVMなんです。

EVMでおさえておくべき3つの数値!(PV、EV、AC)

EVMで実際扱う数値は色々なものがあるのですが、一番重要な数値はPV、EV、ACという3つの数値を利用します。

PV=Planned Value: 成果物を期限内に達成するために必要なコストの計画値。
EV=Earned Value: 一般的には出来高と言われ、特定時点までに作業により完了した実際の価値。
AC=Actual Cost: 作業の実コスト。特定時点までに作業にかかったコスト。

ここで皆さん混乱するのが、EVの部分なんですよね。出来高って?売ってもいないのに?という質問があるんです。簡単な例でご紹介します。

例えば2か月間のプロジェクトがあって、1か月100万円ずつコストがかかる、合計200万円のコストがかかるプロジェクトがあったとします。
この場合、PVは1か月目100万円、2か月目100万円です。

しかし、計画はあくまでも計画。うまく計画通りいくことは稀です。
例えば1か月目に作ろうと思っていたものが計画よりも工数がかかりコストがかかってしまったとしましょう。1か月目に200万円かかってしまった。でも要素成果物は予定通り完成した。この場合、ACはPVよりも100万円分高くなります。100万円で作れる計画が200万円かかったのですから。しかし、スケジュールは予定通りで計画上100万円でできると計画していた要素成果物は完成したので、EVは100万円となり、PVとは同じ金額になります。
次に、例えば、1か月目に作ろうと思っていた要素成果物が予定の100万円をかけても作れなかった場合、ACは予定どおり100万円を費やしているのでACと同じ100万円。しかし、100万円分の要素成果物はできておらず、EV(出来高)は0円となります。

つまり、話を単純化させると、PVを基準値として、PVとACの差でコストを管理し、PVとEVの差でスケジュールを管理しているということです。スケジュール管理は通常「時間」を軸として管理しますが、ここでは「お金」を基準にスケジュールを管理し、「お金」が基準なので、同時に実コストも管理できるという優れものなのです。

実際のEVMでのコスト管理

今までお読みいただき、「なんか大変そう。。。」と思われた方。実際は意外にシンプルですのでご安心ください。(億単位以上のプロジェクトをEVM無しで実行し、あとでトラブルでバタバタする方が大変だと思いますので。。。)

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上のグラフはプロジェクトの現場では一般的に「あり得そうな」、状況を表したグラフです。EVMではこのようにPVを基準として、EVとACとPVの差を視覚的に把握できるグラフを作成してコストとスケジュールを管理します。

では、グラフ上の赤枠の①はどのような状況か分かりますでしょうか?
PVと比べると、EVもACもPVより下回っています。つまり予定どおり予算消化をしておらず、さらにプロジェクトのスケジュールも進捗が思わしくない状況ですね(EVがPVを下回っているので)。プロジェクトで何らかの問題が発生していることが視覚的に分かります。
さらに言うと、EVよりもACの方が上回っていますね。プロジェクトを残業などで進めようという努力かもしれませんね。しかしプロジェクトの進捗が芳しくない状況です。例えば、プロジェクトの計画がうまくいっていない、プロジェクトメンバー間がうまくいっていない、プロジェクトマネジャーがプロジェクトの立ち上げに関連する各種アクションがうまくいっていない、プロジェクトオーナー・スポンサーの決裁・承認がとるのに苦慮している、もしくはオーナー・スポンサーが欲しい情報が提示されておらず決裁できないなどの問題がある可能性がありますね。

では、グラフ上の赤枠の②はどのような状況でしょうか?
EVはPVに追いついてきていますね。すごい巻き返しが見て取れます。プロジェクトが回り出したことがわかりますね。EVMを使っていない場合、メンバーから「計画に追いつきました!」と報告だけがあがってくると思うのですが、EVMを使っていると他の異変を感じることができます。ACをご覧ください。PVよりも上回っています。スケジュールは間に合ったのですが、相当のコストをかけてしまっています。お金で時間を買っていることがわかります。プロジェクトコストマネジメント、購買マネジメント、チームマネジメントがうまくおこなわれていないことが見て取れますね(お金をじゃんじゃん使っても時間が大切だ!と叫んでいるような状況ですね)。

EVMを使っていなかったら、、、恐ろしい状況だと思いませんか?「スケジュールどおりばっちりです!」と良い報告の裏側で、予算オーバーがすごいことになっているのですから。経営者がこれを知らず、PVがACを上回ってから予算オーバーを知ったらどうでしょか。経営者としてはキャッシュフローに大きな影響を及ぼすかもしれず、本体の経営に影響がでてくる可能性があります。

EVMは変化の前兆を把握し、早めに手当することが重要。

EVMでは、EV、ACの変化を定期的に把握し、その変化や前兆を知ることが一番重要です。先ほどの図を例にすると、①の場合では、いち早くプロジェクトが稼働できるよう、課題を解決しなくてはなりません。
②の場合は、EVが急激に改善しているのですが、同時にACが急激に増えていることに着目しACがPVを超えないように課題を取り除く必要があります。
もしも、課題がどうしようもない事情で、合理的な理由があり計画の変更をしなければならない場合、いち早く「変更会議」を通じて、計画の変更を議論し、承認を得る必要があります。

EVMはいかがだったでしょうか?エクセルさえあれば、定期的に管理でいるものですので、プロジェクトの成功率を高めるために、是非トライしてみてはいかがでしょうか!

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